酒米と食用米の違い
日本酒造りに欠かせないお米ですが、どんなお米でも美味しい日本酒ができるかというと、決してそうではありません。食べて美味しいお米と、お酒にして美味しいお米とは求められる特徴が異なっているのです。
通常私たちが食べているお米は「食用米」と呼ばれるのに対し、日本酒造りに適したお米は「酒造好適米(酒米)」と呼ばれています。
食用米と酒米にはどのような違いがあるのかを見る前に、食べて美味しいお米はどのようなお米なのかについて書いてみたいと思います(脱線ですかね^^;)。
美味しい食用米の条件
日本人がお米を食べたときに「美味しい」と感じるお米は、4つの成分によって決まると言われています。水分・タンパク質・アミロース・脂肪酸の4つです。これら4つの成分が良い成績であれば食べた人の70%位が「美味しい」と感じるようです。
具体的には以下のような感じです。
<水分>
水分が多いと保管時に劣化が早く起こり、逆に少ないとお米が割れたりして食味が悪くなります。そのためお米の水分量は14~15.5%が良いとされています。
<タンパク質>
タンパク質が多いお米はパサパサした食感になるため、タンパ気質の含有量は少ない方が良いとされています。
<アミロース>
アミロースはお米のデンプンを構成する物質の1つですが、アミロース含有量が高いとお米を炊いたときにパサパサした食感になってしまします。しかし、低ければ良いというわけでもなく、適度な含有量(アミロース:アミロペクチン=20:80 位)が必要となります。ちなみに、アミロース0%というのが「もち米」になります。
<脂肪酸>
玄米に3%程度含まれている脂肪から作られ、数値が高いほど「古米化」した玄米ということができます。新米の頃は10~20mgの脂肪酸が含まれています。
良い酒米の条件
酒米と食用米には以下のような違いがあります。
- 米の中心にある心白(しんぱく)と呼ばれる部分が一般米より大きい
- 精米したときにお米が割れにくいように粘りがあ
- お米の粒が大きい
心白はお米を光にかざしたときに白く見える部分で、デンプンで構成されています。その周りにある透明な部分はデンプンだけではなく、タンパク質や脂質が混じった部分になります。
日本酒はお米を麹菌で分解して糖化(デンプンを糖に変える事)させ、その糖を酵母が発酵によってアルコールに変えて造るため、純粋なデンプンが多い方が良い日本酒になるのです。
つまり心白が大きい方が良質なデンプンが多い→良い日本酒ができる!
ということになりますね。
精米歩合(磨き)について
日本酒造りには「磨き」と呼ばれる工程があります。
これは精米された白米をさらに削ってお米の中心部分だけにする工程で、磨けば磨くほどお米は白い粒のようになっていきます。
この磨きは日本酒造りに欠かせない工程ですが、なぜこのような「磨き」を行うのかについてみていきたいと思います。
お米の構造
お米の最も外側には籾という硬い殻(籾殻)が付いていて、これを外す作業が「脱穀」と呼ばれています。籾殻はもちろん食べることはできません。
籾殻を外した状態のお米が「玄米」です。通常収穫されたお米は、食用米であれ酒米であれ「玄米」の状態で低温保管されています。
玄米は外側から、果皮(かひ)・種皮(しゅひ)・糊粉層(こふんそう)そして胚乳(はいにゅう)に分かれていて、果皮~糊粉層を「ぬか層」と呼びます。このぬか層まで削り取って胚乳だけにしたお米が「白米」です。
この白米を光にかざしたとき中心部分に見える白い部分が心白です。
磨きが必要なわけ
元々心白(デンプン)の多い酒米ですが、それでもお米の周りにはタンパク質や脂質が含まれています。これらは糖化されないため酒粕として残ってしまいますし、雑味の元にもなってしまいます。そこで外側の部分を削り取って心白部分だけを残す「磨き」という作業が必要になってくるのです。
日本酒のラベルに「精米歩合60%」とか「精米歩合50%」という表記がありますが、「精米歩合60%」というのはお米を40%磨いて取去り残りの部分を60%残したものという意味です。
中心の心白とその周りの部分はハッキリとした境界線があるわけではなく、デンプンの多い心白からタンパク質や脂質を含む周辺部分まではデンプン量が徐々に分散されています。そのため磨けば磨くほど(精米歩合が大きいほど)心白部分のみが残り、雑味の無いスッキリとした日本酒が出来上がるというわけです。
反面、残るお米の量が少しになるため、精米歩合が低い日本酒ほどコストが高くなってしまいます。
精米歩合と日本酒の種類
精米歩合 | 日本酒の種類 |
規定なし | 普通酒・純米酒 |
70%以下 | 本醸造酒 |
60%以下 | 純米吟醸酒・吟醸酒・特別純米酒・特別本醸造酒 |
50%以下 | 純米大吟醸酒・大吟醸酒 |
酒米の種類 生産量上位10銘柄
上でも書きましたが、日本酒造りに適した酒米の種類は100種類以上あり、日本酒造りが盛んな地域ほど多くの種類の酒米が開発されているようです。
農林水産省がまとめた「平成29年度 酒造好適米等の需要量調査結果」を元に、平成30年の生産見込量 量上位10銘柄(玄米での生産量)をまとめてみました。
順位 | 銘柄 | 開発地 | 見込量 (トン) |
割合 (%) |
第1位 | 山田錦 | 兵庫県 | 32,594 | 40.5 |
1923年開発。高精米が可能で砕米が少ない。米粒が大きくタンパク質・アミノ酸も少ない。反面、倒れやすく病気や害虫・風に弱い。 | ||||
第2位 | 五百万石 | 新潟県 | 18,238 | 22.7 |
1944年開発。2001年に山田錦に抜かれるまでは、作付け面積1位であった。心白が大きいため50%以上の高精白は難しい。 | ||||
第3位 | 美山錦 | 長野県 | 5,287 | 6.6 |
1972年農林水産省にて開発。長野県農事試験場で改良を加え第7世代が美山錦と命名される。寒冷地での栽培に適し、多くの品種を生み出す親株となっている。 | ||||
第4位 | 秋田酒こまち | 秋田県 | 2,164 | 2.7 |
1992年開発。新政酵母との相性もよく、秋田県がもっとも推進する酒米となってきている。 | ||||
第5位 | 雄町 | 岡山県 | 1,723 | 2.2 |
1859年に備前国の岸本甚造が譲り受けた2穂から広がった。昭和40年代に絶滅の危機に陥ったが岡山県の酒造メーカーグループが復活させた。 以後、作付面積も徐々に広がっている。 |
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第6位 | 八反錦1号 | 広島県 | 1,394 | 1.8 |
第7位 | 吟風 | 北海道 | 1,343 | 1.7 |
第8位 | 越淡麗 | 新潟県 | 1,164 | 1.5 |
第9位 | 出羽燦々 | 山形県 | 1,040 | 1.3 |
第10位 | ひとごごち | 長野県 | 971 | 1.3 |
酒米総計 | 80,667 |
この表を見ると、上位5銘柄で全国の酒米の約70%を占めています。
その中でも山田錦はダントツ1位の生産量を誇っていることが分かりますね!
まとめ
お米の胚乳部分に天白と呼ばれるデンプン質が多く含まれる部分が大きいほど酒米に適したお米ということができます。
また、より良い日本酒を作るためには「磨き」によってお米からタンパク質や脂質を取り除くことも重要で、50%以上磨いたお米から造る日本酒だけが「大吟醸」と呼べる日本酒になるのですね!
酒米も多くの種類があり、酒米によって出来上がる日本酒にも個性が生まれます。
どの酒米から作った日本酒が美味しいのか!
飲み比べも日本酒を楽しむ1つになりそうですね!
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