日本の清酒メーカー│メーカー数・生産量1位はどこ?

平成27年度 日本の清酒メーカー数

日本にはいったい何社の酒造メーカー(酒蔵)が有るのでしょうか?

酒造メーカーの件数は、国税庁が開示している「企業数・製成数量・移出入数量 (販売数量規模別・企業タイプ別)」という資料が参考になります。この調査は毎年行われていて、国税庁のサイトでは平成12年度調査分から最新の平成28年度調査分までが開示されています。

今回は最新の平成28年度調査分の資料を参考にしました。

細かな資料をご覧になりたい方は以下のリンクからどうぞ!

国税庁:清酒製造業の概況

 

平成28年度調査の「企業数・製成数量・移出入数量 (販売数量規模別・企業タイプ別)」という資料によると、平成27年度(2015年4月~2016年3月)の清酒製造メーカー数は全国47都道府県で1,433社となっていました。

残念ながら清酒メーカー数は年々減少していて、国税庁サイトで開示されているの最も古い統計調査(平成9年度)の2,146社から比べると、実に700社以上のメーカーが廃業してしまったことになります。言い方を変えれば、18年間で約3分の1(33%)のメーカーさんが無くなってしまった計算になります。

最近は、海外をはじめとして日本酒が見直されてきていますので、長い歴史のあるメーカーさんが、これからもず~~~っと残っていいてほしいですよね!

 

都道府県別の清酒メーカー数と製造量

下の表は国税庁が開示している「企業数の推移(都道府県別)」および「製成数量・課税移出数量の推移(都道府県別)」という資料から、都道府県別の清酒メーカー数と生産量をまとめたものです。

製造量については「課税移出数量」という数値を「製造量」とみなしてまとめました。

この「課税移出数量」というのは、1年間に清酒メーカーから移出(出荷)されたお酒の数量のことで、この時点で酒税が課税されるため「課税移出数量」と呼ばれます。この中には出荷はされたものの返品されたお酒の数量は含まれていません。

移出されたお酒が別のお酒の原料として使用される場合は、届け出ることで課税の対象から外れますので(酒税が免除される)、このようなお酒の移出量は「課税移出数量」に対して「未納税移出数量」といいます。

この資料を見ると、清酒メーカー数は 1位 新潟県、2位 長野県、3位 兵庫県 の順になっています。しかし清酒の製造量(課税移出数量)では 1位 兵庫県、2位 京都府が飛びぬけて多く、この2県で全国の約50%を製造していることになります。メーカー数がトップだった新潟県は3位になりますが、2位 京都の37%位しかありませんでした。

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出典:国税庁「清酒製造業の概況(平成28年度調査分)」より編集

 

なぜ、これほど製造量が兵庫県と京都府に集中しているのか・・・
それを見ていきたいと思います。

兵庫・京都の清酒醸造量が多いわけ

兵庫県・京都府の課税移出数量が多い理由を説明するには、日本酒(清酒)の発祥を考える必要があります。

日本酒そのものは今から約1,300年前の奈良時代には醸造されていました。しかし「清酒」と言われる現代風の日本酒が誕生したのは、ずっと後の平安時代(794年~1185年)中期以降だと言われています。

清酒の起源│奈良県?兵庫県?

日本で「清酒」と呼べるお酒の製造法が確立したのは平安時代以降だと言われています。

そして、平安時代中期から室町時代(1336年~1573年)末期にかけて、最も上品で高級な酒と言われていたのが「菩提泉(ぼだいせん)」という銘柄の酒でした。この菩提泉を醸造していたのが現在も奈良市菩提山町にある正暦時というお寺で、このお寺には当時行われていた寺内での醸造を復活させると共に「日本清酒発祥之地」の碑を建てました(1999年に建てられた)。

また、兵庫県伊丹市の鴻池にも清酒発祥の地を示す石碑があります。
これは伊丹市鴻池の児童公園の中に設置されている石碑で、「鴻池稲荷祠碑(こうのいけいなりしひ)」という石碑です。この地は江戸時代の豪商として知られる鴻池家発祥の地で、この鴻池家は酒造りによって財を成し、作った酒は江戸まで出荷していました。
この鴻池家にあやかろうと、近隣の池田・伊丹・灘・西宮などで酒造業を起こした者が数百軒あったそうです。

どちらが本当の清酒発祥の地なのか?
という野暮な疑問はここでは置いておくとして、重要なのは現在の奈良県や兵庫県にあたる一帯で清酒の製造法が発展し、醸造量も増えていったという事です。

清酒産地の形成と広がり

鎌倉時代(1185年~1333年)に入ると商業も盛んになり、京都の伏見区を中心に、自分の蔵でお酒を造り、そのお酒を販売する店舗も併せ持った、「造り酒屋」が隆盛しました。

室町時代(1336年~1573年)になると、京都での酒屋の数はさらに増えていき、応永32年(1425年)には洛中洛外あわせて342軒にも達していたようです。やがて京都以外の土地でも酒屋が見られるようになり、京都で造るお酒ではないことから「他所酒(よそざけ)」と呼ばれて京都の酒市場に出回るようになりました。

この「他所酒」の産地が日本酒文化の中心的な役割を担っていったのです。

他所酒の主な産地としては、西宮(兵庫県)、堺(大阪府)、加賀(石川県)、伊豆(静岡県)、河内(大阪府)などがありました。

江戸時代になると他所酒の大きな産地として「摂泉十二郷(せっせんじゅうにごう)」という酒郷が形成され、上方の一大酒造地として発展していきました。特に慶長5年(1600年)、伊丹の鴻池善右衛門(前述の鴻池稲荷祠碑の石碑になった方です)によって、清酒を効率的にそして大量に生産する製法が考案されたのをきっかけに、お酒が一般大衆にも飲まれるようになしました。

摂泉十二郷は次の地域のことを指します。

大坂(大阪府)・伝法(大阪府)・北在(兵庫県)・池田(大阪府)・伊丹(兵庫県)・尼崎(兵庫県)・西宮(兵庫県)・今津(兵庫県)・兵庫(兵庫県)・上灘(兵庫県)・下灘(兵庫県)・和泉国の堺(大阪府)

このように、日本酒(清酒)は現在の京都府、兵庫県、大阪府を中心に発展していったことが分かります。これが現代も受け継がれ兵庫県・京都府の課税移出数量が多い理由になっているのです。

メーカー別売上高トップ20

兵庫県・京都府は古くから酒造りが盛んでしたが、現在もこれらの地域に大手酒造メーカーが集中しています。大手酒造メーカーをランキングする際に、そのメーカーの売上高を比較すれば良く分かります。

2016年度 清酒メーカー売上高上位20社

各メーカーの売上高については、帝国データバンクの「清酒メーカーの経営実態調査」を参考にさせていただきました。

以下の表は上記資料を基にまとめたものですが、売上高1位は「白鷹酒造株式会社」の約348億円、2位は「月桂冠株式会社」の約274億円、3位は「宝ホールディングス株式会社」の約248億円でした。

また売上高上位20社の約半分が兵庫県と京都府ですので、このことからもこの2地域の醸造量が多い理由が分かりますね。

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まとめ

日本酒(清酒)の製造メーカー数や生産量についてまとめました。

平成27年度の統計では、製造メーカー数が最も多い県は新潟県の88社で、長野県(76社)、兵庫県(68社)がそれに続いていました。

しかし、実際の生産量を見ると、兵庫県と京都府で全国の約50%を占めていることがわかります。これは清酒の歴史を見ても明らかのように、現在の清酒は京都を中心にして発展し、清酒醸造の条件にも恵まれた兵庫県や大阪府で酒造りが盛んであったからです。

現在でも、大手の酒造メーカーは兵庫県・京都府に多く本拠を構えており、この地方での長い酒造りの歴史が続いているのです。

 

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日本酒~SAKE~│日本酒の雑学・種類・保存方法など
日本酒の歴史や作り方などの雑学と保存方法の3つのポイント、なぜ賞味期限が記載されていないのか!?などを説明しています。日本酒を楽しく飲むためも基礎知識として活用していただき、いろいろな日本酒を試すきっかけになるような記事を書いています。

 

コメント

  1. 長田 眞枝 より:

    参考になりました。
    ありがとうございました。
    売り上げ上位20社のところで、文面は「白鷹酒造」、表では「白鶴酒造」となっていますが、白鶴が正解なのですね?

    • 酔魚草 より:

      お返事が大変遅くなり申し訳ありませんでした。
      ご指摘の通り売上第一位は「白鷹酒造」ではなく「白鶴酒造」の間違いです。
      記事の修正をできるだけ早く行いたいと思っています。

  2. 株式会社祭原 より:

    日本酒が一番飲まれた 時代では大倉酒造月桂冠が 49万石まで いたことがある
    当時は小さい蔵から 桶買いをするのが当たり前だった 酒蔵は 多くの不動産を持ち 日本酒が赤字でも 不動産収入で 営業していた 神戸に福寺酒造( 現在の神戸酒心館) というのがあるが 阪神大震災で 蔵を建て替え 50億円の借金を作ってしまった 当時安福社長の 自宅が 神戸の 山手の 神戸大学と 神戸松蔭の ちょうど間ぐらいの一等地に3000坪の自宅を持っていた 皇室の東宮御所みたいな ところに社長と 弟の二人で暮らしていた 結局 借金のために 21億円で売却してしまった

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