大吟醸酒にもアルコール添加?│醸造アルコールを添加する理由

醸造アルコールとは?

そもそも醸造アルコールとは何なのでしょうか?

ザックリ言ってしまうと「食品用のエタノール」のことで、日本酒の増量や品質調整、アルコール度数の調整などに用いられています。

国税庁の「清酒の製造品質表示基準」には醸造アルコールについて以下のように記載されています。

醸造アルコールとは

 醸造アルコールとは、でんぷん質物や含糖質物から醸造されたアルコールをいいます。
 もろみにアルコールを適量添加すると、香りが高く、「スッキリした味」となります。さらに、アルコールの添加には、清酒の香味を劣化させる乳酸菌(火落菌)の増殖を防止するという効果もあります。
 吟醸酒や本醸造酒に使用できる醸造アルコールの量は、白米の重量の10%以下に制限されています。

出典:国税庁「清酒の製法品質表示基準」の概要

また、日本酒には9種類の分け方がありますが、醸造アルコール添加の有無で分けると以下の表のようになります。

醸造アルコールの添加
なし あり
純米大吟醸酒 大吟醸酒
純米吟醸酒 吟醸酒
特別純米酒 特別本醸造酒
純米酒 本醸造酒
  普通酒

この表から見てもお分かりのように、ラベルなどに「純米」と表示されていない日本酒には醸造アルコールが添加されているのです。

というよりも、現在の分類法では醸造アルコールが添加されていない日本酒を「純米酒」、添加されている日本酒を「本醸造酒」と分けているため、たとえ大吟醸酒であっても醸造アルコールを添加しているものには「純米」という表記ができないといった方が正しいのかもしれません。

醸造アルコールは何からできているのか?

それでは醸造アルコールはどのように作られているのかを見てみます。

醸造アルコールの原料は お米やサツマイモ、トウモロコシなどのデンプン物質や糖蜜などの含糖質物で、これらを醸造してアルコールを作り、連続式蒸留機で100%近くまでアルコール濃度を高めたものです。

現在では海外から「アルコール飲料」という名目で輸入した醸造用アルコールが主流になっています(主な原料はトウモロコシやサトウキビ)。

これは甲類焼酎と同じ原料・製法で、実際に醸造用アルコールとして輸入されたものをアルコール度数36度未満に薄めた「甲類焼酎」として販売もされています。

つまり、醸造アルコールは「添加」という単語から連想される、「化学物質の添加物を日本酒に加えている」とは全く違うものなのです。

正しくは

日本酒に焼酎を加えて品質を安定させたもの

と言った方が良いかもしれませんね。

醸造アルコール添加の歴史

もともと日本酒はお米と米麹から造られるお酒でした。

この日本酒に別のアルコールを添加するという手法は結構古く、江戸時代初期から行われていた「柱焼酎」が原型であるといわれます。
「柱焼酎」とは米焼酎などの焼酎を日本酒の醪や新酒に添加する手法で、醸造において以下のメリットがありました。

  • 現代のように衛生面がシッカリしていなかった時代、高濃度のアルコールを添加することで日本酒の腐敗(腐造)を防ぐ目的があった
  • 日本酒よりも香味がハッキリしている焼酎を添加することで、日本酒の香味を高めた
  • 日本酒が切れのあるスッキリした飲み口(辛口)にすることができた

これらは江戸自体初期に書かれた「童蒙酒造記(どうもうしゅぞうき)」という日本最高とうたわれた醸造技術書の書かれていました。

その後、戦後の米不足時代には日本酒に2倍量のアルコールを加えて3倍に水増しした三倍増醸酒が作られました。

現代では腐敗防止、米不足や酒不足という理由は無くなり、普通酒では日本酒の製造コストを抑える目的で使われるようになりました。

しかし、醸造アルコールを添加することで日本酒の質が安定する・香りが出やすくなる・味にキレが出るというメリットは現代でも変わりがありません。そのため、小量の醸造アルコールを添加した本醸造系の日本酒が多く存在しているのです。

醸造アルコールの添加量

醸造アルコールには酒質の安定・吟醸香の引き出し・味のキレといったメリットがありますが、その添加量はどうなっているのでしょうか?

普通酒については醸造アルコールの添加量に規定はありませんが、本醸造酒~大吟醸酒までには「白米1トンにつき120リットルまで(重量比で約1/10)」という決まりがあります。

各酒蔵は自社で製造する日本酒の特性に合わせて、醸造アルコールの添加量を決めているのですね。

まとめ

純米酒と表示されている日本酒以外は醸造アルコールが添加されています。

これは少量のアルコール添加によって得られる

  • 酒質を安定させる
  • 吟醸香が引き出される
  • 味にキレが出てくる

これらのメリットを日本酒に与えるためです。

醸造アルコールは植物由来のアルコール(焼酎甲類と同じアルコール飲料)なので、化学物質の添加とは全く違うものなのです。

「純米酒よりも(醸造アルコールが添加された)本醸造酒の方が好き」という方がたくさんいらっしゃるのも納得できますよね!

 

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日本酒の歴史や作り方などの雑学と保存方法の3つのポイント、なぜ賞味期限が記載されていないのか!?などを説明しています。日本酒を楽しく飲むためも基礎知識として活用していただき、いろいろな日本酒を試すきっかけになるような記事を書いています。

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