焼酎の雑学
焼酎とは
焼酎と聞くと「芋焼酎」「麦焼酎」「そば焼酎」など、「○○焼酎」という名前が浮かんできますよね。日本酒は米、ワインはブドウとは違って、どうして焼酎にはいろいろな原料が使われているのでしょうか?
そもそも焼酎って何? という視点で少し調べてみました。
焼酎に限らずお酒の定義は「酒税法」で規定されていますが、その酒税法では焼酎は以下のように定義されています(第三条八項)。
焼酎(連続式蒸留焼酎又は単式蒸留焼酎をいい、水以外の物品を加えたものを除く。第十一号において同じ。)
出典:e-Gov(イーガブ)
ここで出てくる「連続式蒸留焼酎」と「単式蒸留焼酎」ですが、平成18年の酒税法改正までは「甲類(連続式蒸留焼酎)」「乙類(単式蒸留焼酎)」と呼ばれていました。名称が変更された後も甲類・乙類の呼称は使用できるという事ですので、このサイトでは聞きなれた甲類・乙類で表記したいと思います。
焼酎甲類(連続式蒸留焼酎)
甲類の焼酎はチューハイを作ったり梅酒を漬けたりするときに用いる、焼酎自体の味や香りがあまりないスッキリとした焼酎です。一般的に市販されているのは20度、25度で、果実酒を作るときに使用するホワイトリッカーで35度などもあります。
甲類焼酎は蒸留後に水を加えてアルコール度数を調整しているのですが、酒税法でアルコール度数は36度未満と定められています。チューハイとして飲みやすい(割りやすい)度数が20度や25度なんでしょうね。
甲類焼酎の規定はアルコール度数以外にもいくつかあって、以下のような規定があります。
- 発芽した穀類を使用しない
- 果実を使用しない
- 白樺の炭などでろ過しない
- 糖蜜などを使用しない
- 蒸留時に発生するアルコールに他の物品の成分を浸出させない
これらは、他の種類のお酒と区別するために細かく規定されています。例えば「発芽した穀類」を使うとウイスキーと同じ製法になってしまうとか、「白樺の炭」でろ過するとウオッカと同じ製法になるからです。
そのため、これらの規定は焼酎甲類だけではなく、焼酎乙類にも適用されます。
このような規定に沿って製造された(アルコール発酵された)原酒を、連続した蒸留装置で蒸留したものが甲類の焼酎になります。
焼酎乙類(単式蒸留焼酎)
乙類の焼酎は、芋焼酎や麦焼酎に代表される昔から作られている焼酎です。甲類に比べ原料の味や香りがシッカリと残っているため、ロックやお湯割りなどで飲むことが多いようです。
アルコール度数も45度以下と規定されていて、甲類よりも強い焼酎を作ることができます。市販されている乙類の焼酎も20度や25度が一般的ですが、中には規定ぎりぎりの45度という焼酎も売られています。逆に日本酒と同じくらいの15度前後の焼酎もあり、いろいろな味と強さを楽しむことができるお酒だと思います。
上に書いた甲類の規定の他に乙類には以下の規定が適用されます。
- 穀類や芋類などを原料として麹菌を使って発酵させたもの
- 蒸留は単式蒸留機を用いる事
- 清酒かすと水または、米・米麹と水を使って発酵させたもの
- 砂糖・米麹と水を使って発酵させたもの
- 穀類やいも類と水及び国税庁長官の指定する物品を原料として発酵させたもの
「国税庁長官の指定する物品」というのも49種類もあって、「○○焼酎」という名前などで売られていたりします。何が指定されるのかのソースは見つからなかったのですが、個人的な見解として地域特産品を焼酎にしたいという要望からなのかな?と思います。
<国税庁長官の指定する物品49種類>
焼酎の歴史
日本で記録に残っている焼酎の記述は、1546年に薩摩国(現在の鹿児島県西半部周辺)に上陸したポルトガル商人が記録したものです。当時は芋焼酎とかではなく、米から作った蒸留酒(蒸留しているので清酒とは異なります)を飲んでいたようです。
「焼酎」という呼称が初めて登場するのは1559年の大工さんの落書きでした。とある神社の補修工事を行っていた際に「けちな座主(神社のお偉いさん)で、一度も焼酎を飲ませてくれなかった」といった内容だったそうです。
これ・・・書かれた神社さんも今となっては「あの時焼酎をふるまっておけばケチなんて言われなかったのになぁ」と思っているかもしれませんね(笑)
このように、当初は米から作った焼酎でしたが、鹿児島県をはじめとする九州地方は米の栽培にはあまり適した地域ではなかったため、米や雑穀でもろみを作り、それを発酵・蒸留したお酒を飲んでいました(初期の焼酎ですね)。18世紀になってサツマイモの栽培が盛んになると米ではなくサツマイモと麹でもろみを作り、そこから焼酎を製造するようになりました。
当初の蒸留方法は1度だけの単式蒸留(連続蒸留機が日本に入ってきたのは明治28年頃)だったので、今でいう「乙類焼酎」という事になります。
焼酎の製造方法
甲類焼酎の製造方法
焼酎甲類は癖のない味と香りが特徴の焼酎で、甲類の原料は糖蜜や酒粕、大麦やトウモロコシなどのデンプン質のものを使用します。
これらの原料を糖化し、水と焼酎酵母をいれてアルコール発酵をさせます(熟成もろみ)。この熟成もろみを連続蒸留機で蒸留してアルコール度数を高めていきます。高い場合はアルコール濃度が90%前後にも高まりますので、これを水で割りろ過・精製して甲類焼酎の出来上がりです。
甲類焼酎は連続蒸留機で蒸留することが前提ですので、単式蒸留機で複数回蒸留を繰り返しても甲類焼酎にはなりません。
乙類焼酎の製造方法
乙類焼酎は芋焼酎やそば焼酎など、独特の味と香りが楽しめる焼酎です。製造方法は大まかには2つの工程からなっていて、「原料の準備」と「もろみの準備」です。
<原料の準備>
イモや麦・そばなどの主原料となる原料を洗浄して蒸します。この原料が出来上がった焼酎の味や香りとなります。
<もろみの準備>
もろみを作るには穀類などを麹菌で糖化させ、それに焼酎酵母を加えます。この時の麹には米や麦・イモなどが使われます。
麹の原料を洗浄してから蒸し、麹菌をつけて原料のデンプンを糖に変化させます。ここに水と焼酎酵母を加えて発行を促し、糖をアルコールに変えていきます。これを一次もろみと呼びます。
この一次もろみと水をを準備した原料に加えてさらに発酵を続け、二次もろみを作ります。この二次もろみを単式蒸留機で蒸留してできた焼酎が乙類焼酎となります。
焼酎の種類
焼酎の種類は「甲類焼酎と乙類焼酎の2種類」という事は書かせていただきました。これは連続蒸留機を使用するか単式蒸留器を使用するかという、蒸留の方法で分かれていますが、乙類焼酎には使う原料によってとても多くの焼酎が存在します。
よく目にする焼酎としては、
- 米焼酎
- 麦焼酎
- 芋焼酎
- そば焼酎
- 黒糖焼酎
などではないでしょうか。
泡盛
泡盛は米と米麹から作られていて、焼酎とは若干作り方が異なっていますが、酒税法上は乙類焼酎として分類されています。
泡盛は乙類焼酎の中でも「米を原料として黒麹を用いた米麹で製造したもの」と定義されています。つまり黒麹(アワモリコウジカビ)以外の麹菌を使ったものは泡盛とは呼べないのです。この泡盛を3年以上寝かせて熟成させたものが「古酒(クースー)」と呼ばれています。
そして、泡盛はの中でも沖縄県で作られた泡盛だけに「琉球泡盛」という呼称が許されていているのです。
本格焼酎
焼酎の瓶に「本格焼酎」と書かれているものを見た方も多いのではないでしょうか?
本格焼酎と乙類焼酎はほぼ同じものと思っていただいてよいと思います。それというのも、元々日本には乙類の焼酎しかありませんでしたが、明治期以降に連続蒸留機という蒸留装置が入ってきて以降、新しい焼酎(の製法)として甲類焼酎が誕生しました。当初は古来の製法で作られた焼酎を旧式焼酎、新しい製法で作られた焼酎を新式焼酎と呼んでいましたが、それが乙類焼酎(単式蒸留焼酎)と甲類焼酎(連続蒸留焼酎)に分類されたのです。
しかしこの甲乙というのは順位を表す言葉としても使用されていたため、「甲類の方が乙類よりも優秀」というイメージを持ってしまう可能性がありました。これを危惧した霧島酒造の社長さんが「本格焼酎」という呼称を作り1971年に正式に「本格焼酎」の表記が可能になりました。
おすすめの焼酎は?
私は「美味しい酒は人それぞれで異なる」と思っていますので美味い焼酎ランキングのようなものは作れません。そのため、私の主観が多分に入った記事になってしまいますが、これまで飲んだ焼酎やこれから飲んでみたい焼酎を紹介できたらいいなと思っています。
焼酎の保存方法・賞味期限
焼酎の賞味期限
焼酎の瓶やラベルに賞味期限は記載されていません。記載されているる日付は製造日(瓶に詰められた年月)になります。
つまり、焼酎に賞味期限は無いということなのです。
焼酎はアルコール濃度が20度以上ありますので、ほとんどの雑菌は繁殖することができません。さらに焼酎は糖類を含まない蒸留酒ですので、細菌にとっての栄養源が無いという事になります。
これが焼酎には賞味期限が無い理由です。
まぁ、泡盛では何十年も前の古酒がありますから、賞味期限があったら古酒は作れないですよね。
焼酎の保存方法
賞味期限が無い焼酎ですが、何年たっても美味しく飲めるかというと・・・
保存方法で焼酎の味は大きく変わってしまうのです。
<光の影響>
日光や蛍光灯の光が当たると色や味が変質してしまします。焼酎の瓶は着色されているものが多いですが、これも光から焼酎を守るためなのです。着色瓶でも光は入りますので、新聞紙などで瓶を包んでおくことをおすすめします。
<温度の影響>
また、高温の場所に保管するのも風味を劣化させる要因の1つです。最適なのは1年を通してできるだけ低温で温度変化の無い場所がベストです。
押入れや床下の収納スペースなどが良いと思います。
冷蔵庫で保管する方もいらっしゃると思いますが、乙類焼酎に関しては注意が必要です。冷蔵庫などで保管すると、旨味成分が凝縮して瓶底にオリができたりしますので、他の保管場所が無い場合を除いては冷蔵庫保管は避けた方が良さそうです。
<開封後の保管方法>
開封前の焼酎も未開封と同じ保管方法をしておけば、風味を保つことができます。1点だけ注意していただきたいのは、キャップをしっかり閉めて保管するという事です。
開封ごの焼酎はどうしてもアルコールが抜けやすく、味が劣化しやすくなります。スクリューキャップであればしっかりと閉める、一升瓶のキャップであれば奥までしっかり押し込むといった点に注意してください。
家庭で保管するときの4つのポイント
- 瓶を新聞紙等でつつみ、光の当たらない場所で保管する
- 高温多湿の場所を避け、できるだけ低温で温度変化の無い場所で保管する
- 冷蔵庫で保管する場合は瓶底にオリができる場合がある
- 開封後はキャップをしっかりと閉めて保管する
まとめ
焼酎について紹介させていただきました。
焼酎には大きく分けて2種類があり、甲類焼酎(連続式蒸留焼酎)と乙類焼酎(単式蒸留焼酎)の2つです。
甲類焼酎はアルコール濃度が36度未満と規定されていて、酎ハイや果実酒に使用するホワイトリッカーのようなスッキリした味と香りの焼酎です。
乙類焼酎はアルコール濃度40度以下と規定されていて、芋焼酎や麦焼酎などの原料の風味がハッキリしている焼酎で「本格焼酎」と呼ばれることもあります。泡盛も乙類焼酎に分類されています。
焼酎には賞味期限はありませんが、保管は光のあたらない冷暗所で保管してください。
焼酎には多くの種類がありますので、自分に合った焼酎を探す手助けになれば幸いです。
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